いつ頃からだったでしょうか。私を見るグランの視線を強く感じるようになったのは。
目が見えづらくなっていたのでしょう。音が聞こえづらくなっていたのでしょう。私の動きや声掛けをじぃーっと耳をすまして、気配を感じ取ろうと集中していました。常に私の指示を待ってくれていました。元気な頃は行動も機敏なので、むしろ呼ばれるまでのんびりしていたようにも思います。
お仕事を引退してからはそっとしておいてやりたくて、足音や物音をたてないようにする習慣になっていました。でもその気遣いさえ無視して、身体も心も限界を超えているはずなのに、行動をともにしようと最後まで頑張ってくれました。
今でも、リュックのファスナーを閉める音に「あ、もういないんだ」と何度も思ってしまいます。
膝枕、腕枕で眠ってくれるグランとの、夢のような時間が持てたことに感謝です。お仕事犬としてみんなに愛され続けたグランが、私だけのグランになってくれた瞬間です。
グラン、一緒に過ごした自宅の庭に、今年も冬の赤い花が咲いたよ。